『姫路の顔づくり』を考える市民フォーラム

―みんなで、姫路の都心部の将来を考えよう!―

基調講演


「姫路スタイルのアーバンデザイン」

明治大学・小林正美教授



15年前に学生つれてきて、研究を行っていましたら、このような大役を任されてしまいました。

1.都市の更新と歴史的重層性


都市は重層性、つまり重ね合わせでできています。
江戸と姫路はよく比較されますが、江戸は右回りの螺旋、姫路は左回りの螺旋で非常に特徴的です。
これは1650年ごろの絵ですが、江戸は内堀という人工的な運河を敵から城を守るという目的で造成しました。その後、近代都市計画によりお堀を埋め立てて、その後、空襲などを経験しましたが江戸の右回りの螺旋という都市構造は結果的に今も残っています。このように、現代のまちは積層された歴史によってまちが形成されていると言えるでしょう。
      

一方、姫路では、内豪、中豪、外豪と、左回りの螺旋でできています。昔は、みゆき通りがまちの軸になっていました。さらに、昔の城郭の地図と現在の地図を重ねると、現在の駅のところにも門があったということがわかります。先代の石見市長は大手前通りの近代的な更新を行いました。その後、大手前通りがまちの中心軸になり、世界遺産と新幹線駅が近い、世界に見ても珍しい都市構造になったのです。
昔の大手前通りは歩道がこんなに広かったことが分ります。それが経済成長とともに車道が広がっていきました。幅員が50mの大手前通りには、先代の石見市長がパリの都市計画をイメージしたんだと思うんです。パリの都市計画はオースマン男爵が考えたのですが、道路がクロスするところにランドマーク、寺院などを置くようなバロック的な都市構造が特徴的で、先代の石見市長は「日本のオースマン」とも言えるのではないかと思います。時代も変わり、今、姫路の玄関口が大きく変わろうとしています。100年持つまちづくりを考えるのは今しかないのです。

2.姫路市中心部が抱える現状の課題

中心部は9年間で8パーセントと人口減少が深刻な問題です。そして、高齢化も同時に進行し、中心市街地は超高齢化という状況です。
商業については、売上が減少しています。これも深刻な問題です。
観光ですが、これは私が勝手に呼んでいるんですが、観光客1/2の法則というのを発見しました。姫路市への総入込客数が800万人、主要観光施設入込客数が401万人、姫路城周辺地域への入込客数が197万人、姫路城への登閣者102万人。皆さんも覚えてください。800,400,200,100です。この200万人が一万円ずつ使ったとすると、200億円となり年間売り上げが4%もアップするという計算になるのです。
また、姫路城は年間観光客が800万人で、そのうち16%が外国人なんですね。そのうち半分が鉄道利用者です。また、1/2の法則がでてきましたね。
その観光客が駅から姫路城にいくことを考えてみると、歩行者の回遊性が乏しいと思います。商店街を帰り道として利用するような、静脈的な動線が重要でしょう。昼は姫路城、夜は商店街で楽しむというような回遊性のあるまちになるといいですね。

3.これからのアーバンデザインのあり方  〜人のための街づくり(世界の潮流)

公共空間をデザインするというのは、基本的には、道路や公園などの公共空間(パブリックスペース)や街並みをどう扱うのか、ということになってきます。
今までは、トップダウンで何でも国から決めていくという時代でした。しかし、これからは人が減っていく、文化的資源の活用、住民参加が求められていて、時代が変わるとともに求められるテーマが変化しています。 

     

ボストンのビックディッグでは、使いながら高速道路を地下化し跡地を公園化しました。

パリでは、レンタサイクルを実施し、自転車専用レーンを設けています。夜になるとトラックで自転車を回収し、元の場所に配置しています。この仕組みは全て広告料で賄っている民間のサービスで、日本でもこういった試みが必要ですね。
また、韓国・ソウルのチョンゲチョン川では、高速道路を撤去し、ないがしろにされていた川を復元しました。
このようにこれまでの効率主義から人間の環境都市へ、自動車中心から人間の復権へと変わってきています。

4.歴史まちづくり法と姫路のDNA

トップダウンの考え方から住民参加、地方分権というボトムアップの考え方へ移行しています。
地域の特徴をいかす、街並みや地割りのDNAをどう生かしていくのか?
姫路は中世城郭都市とバロック都市の多層性でできています。
これから姫路のDNAに新時代の街並みをどう重ねていくのか。
また、歴史まちづくり法などを活用し姫路のDNAを活かした新しい姫路の将来ビジョンが求められています。
これらは全てWIN-WINゲームにしていかなければならなりません。そして、共有可能なビジョンをどう導いていくか?
歴史文化の軸と現代文化の軸が交差した賑やかな楽しい駅前空間にしなくてはならないと思います。
城郭と現代都市が共存する姫路らしい公共空間を創り出すために、住民と行政、商業、観光客にとって最善のまちづくりにしていきましょう。


司会:小林先生、ご講演どうもありがとうございました。

    先生には、この後、パネルディスカッションのコーディネーターとして登場していただきます。